ヒビコレ

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観劇記録 劇団ハンニャーズ「ウルトラリップスI[ai]」

12月7日 月潟稽古場にて。

 ウルトラリップスは今回で6作目。
 流れとしては3作目のウルトラリップス0の後の話。だからIなのかと思ったら「one」ではなく「ai」だった!
 このタイトルの理由を中盤にてようやく理解。「エーアイ」と読んで人工知能ものかと思っていた。
 
 乙に出会う前、そして、まだ七浦の兄が生きているころ。公演チラシにも書かれているようにシリーズの核心の謎である七浦の兄が「亡くなった/無くなった」謎にせまる。
 0と同じくまたもや教団関係者にまつわる犯罪。当の千里は教団から外れ、牢獄の身。
 殺人事件の謎、そして、千里と兄の関係の謎、千里の能力?など、様々な伏線を貼りつつ、ストーリーは進む。
 約100分と長丁場ながらテンポよく進み、それほど長くは感じない。しかし異常な緊張感。
 千里も0の時の「麦チョコ」のシーンでもあれば、和んだのだろうが、そのようなシーンもなく、また千里の記憶と、「思い」が緊張感となって劇空間を支配している。
 
 道化的存在の遠善ですらも、道化ではなく、むしろ狂気を感じさせる。
 そう、劇中人物が皆、どこか狂っており、そして疎外されており、その切なさの中では笑いですら、緊張を和らげることはできない。
 それは謎解きが終わった後でもそうで、その緊張ゆえ、最後の美しい舞台演出で一気に解放された気分になった。
 とは言え、それだけで終わると非常に切ない話で終わっていたのだが、ラストに初代千里の小出さんと、乙の近藤さんが出ることによって一気に雰囲気が変わった。
 あの存在感は圧巻の一言であった。
 あの登場により、七浦千里が「救われないまま救われている」という状態を一気に理解できた。(気持ちになった)